夏の陰/岩井圭也
テーマが暗くて、絶対に「嫌な人間」が出てくる感じ満々で、その通りだったけれど、それ以上に面白くてあっという間に読んでしまった。
読んだきっかけは「読むべき本」でググってでてきたまとめサイトに載っていたからだ。最寄りの図書館で検索したらあったので、借りてきた。
表紙がかっこいい。剣道。
感じたこと
①経験することの重要性
わたしは小学生の高学年で1年間剣道をやっていた。
正直この経験が活用された?ためになった?経験ってそんなにない。
でも、この小説により入り込めたのは、剣道をやっていた経験のおかげもある。
剣友会の長の柴田さんの感じとか、わたしが習っていたところの師範と似ている雰囲気を思い浮かべた。
試合の雰囲気も鮮明に思い浮かんだ。
自分が手を出すまもなく相手に1本とられて、情けなくて恥ずかしくて、調子が悪いふりして首をひねるところとか、とてもよく想像できた。
剣道したことなかったとしても面白く読めたと思うけど、情景がより細かく想像できたから、剣道やっててよかったと思った。
経験したことの多さは、共感できる機会の多さだと感じた。
わたしは、1年だけだけれど剣道をやっていたことで、上手な人の試合の激しさや冬の稽古場の床の冷たさとか、手ぬぐいの巻き方とか、面が蒸されて臭う感じが思い浮かんだ。
経験ってだいじだなあ
新しいこと、趣味ふやしたりすることの重要性って、本や会話との共有言語が増えるから興味が持てるものが増えて、人生が楽しくなるってことなのかな?
本の内容とは全然関係ないけど、読み終わった直後に感じたのが↑の感想。
②主人公の父親
こんな暴力的な存在が一番身近にいるって恐ろしすぎる。
父親に反抗できない母親を責める気になれなかった主人公が、軽蔑するようになったっていうところがリアルだった。
行政書士試験に合格した母親が、「あんたを見てると父親おもいだすからもう二度と会いたくない」というシーンが、わかるんだけど、ん?となった。いやわかるんだけど。
あんな暴力的な男の血を引き継いでいる男、っていう点で息子とはいえ恐ろしいから。母親は離れて暮らしたがったんだと思う。でも半分は母親の血なんだよなって。
母親も自己肯定感が低いから、「半分は私の血が流れてるんだから父親とうり二つの人間になるわけない!」と強気にはなれなかったんだなと。
自己肯定感高かったらそもそも、暴力男と結婚しないか。
家族に理不尽な暴力をふるう人間が本当に理解できない。
でも、そういう人間の心理に興味がありすぎていろいろ調べてからは、納得はできないけれど頭ではこういうことなのかなって、少しは想像はできるようにはなった。
でも、やっぱりわからない。
暴力をふるうくせに、家族と一緒にいたがるところが理解しがたい。
うっとうしいから暴力をふるうわけじゃないんだよね、だってそうだったら一人になりたいはずだもん。
本の中では、外では自信ないから家では威張り散らしてるってあったけど、暴力をふるうことで家庭では価値のある存在だと思いたかったのかな?
ますます理解できない。
③被害者と加害者の闇
加害者の息子と被害者の息子の闇についての話で、どっちの目線からも語られるので、二人共の心の闇を知ることができたのがよかった。
読んでいる最中は、加害者の息子・岳の方に感情移入してしまった。
生まれ育った環境からして不遇だし、そのあとに自ら陰の道を進んでいる点など、道場する点が多くて・・
そして加害者の息子、って全く本人は関係ないのに疎ましがられるのが不条理すぎて。
でも読んでじっくり自分がもし被害者の子供の立場だったらと考えると、被害者の息子・和真により感情移入した。
もし母親が殺されて、加害者の家族がのうのうと生きてたら、許せないなって。
でも、子供も虐待されてたと知ったら、変わるけどなあ・・