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さくら/西加奈子

西加奈子さんの本は好き。

一番はきりこについて。

他にも、i、白いしるし、漁港の肉子ちゃん、ふくわらい、サムのことなどを読んだけど、読みやすいのに毎回新鮮味がある感じ。

 

さくらは図書館で借りた。

ずっと気になっていたのだ。サラバ!を借りようとしたが、上下あるのでとりあえず今回はさくらにした。

 

やっぱり本を読むと、登場人物の年代を振り返ると同時に自分も振り返ることになって、それがいいなあと思う。話を楽しみつつも自分自身とも向き合える感じ。

 

さくら、は犬の名前だった。

タイトルからはストーリーが全く予想できなかったけど、読み進めるうちに、家族の話だと分かった。

 

三人兄弟の真ん中が、主人公。

兄も妹も美形で人気者。妹は変わり者だけど。

 

①兄妹

こういういけてる兄妹は物語の中だとしてもまぶしい。

わたしが学生の時はこういうまぶしい存在って雲の上の存在だった気がする。

アプローチをしようとすら思わなかった。

主人公はいたって素朴とあるかれど、こういう勝ち組の兄弟がいるだけでうらやましいなあ。

お兄ちゃんは絵にかいたようなさわやかで性格のいいイケメンで

妹は超美人だけどいつもぼうっとしていて男に興味がない変わり者。

 

お兄ちゃんがなくなるのは序盤に明かされるけど、なんでなくなるのかは後半からうすうす感じ取れて、そして亡くなる。

さわやかイケメン人気者がこういう結末を迎えるって、学生時代は誰も夢にも思わないんだよね。

学生時代の存在感って圧倒的で、無意識のうちにこの人は一生そういうきらきらした世界で生きていくんだよなあとぼんやり思う。

でも当たり前に人生って何が起こるかわからなくて、お兄ちゃんみたいに雨の夜にコンビニに出かけてタクシーにはねられて下半身麻痺になること、あるんだよなあって。

 

当たり前のことだけど、忘れちゃうから。

きらきらしてる人って眩しくて羨ましくて、このひとはずっとそうなんだって思わないと。どこかで自分が傷つくきがするんだよね。

この人も人間なんだからこれから先何が起こるかわからないし、傷つくこともあるし、事故に合うこともある。って思いながら生きてると、その人がすごく幸せな顔をしているのを見たときに、「あれ?そんなことないじゃん、この人ずっと幸せなんじゃん、道の出来事に振り回されて損してるのってわたしらだけじゃん」って、落ち込むんだよね。

 

だったら、そういう人はずっと幸せな人間なんだ、ってある種の諦念を持っていた方が、心が楽になったりする・・ひねくれてるな

 

 

②頭がおかしい人

主人公と兄妹は小学生のころ、「フェラーリ」という公園に住み着いている、紙がぼさぼさで鉄パイプを振り回すやばい男を使ってチキンレースをしている。

おにいちゃんは下半身まひになって車いす生活になって初めて、「フェラーリ側の人間」になったことを思い知る。それは。子供たちを含めた周りの人間に、異質で触れがたくて、自分たちとは違う人間だと思われること。

 

小さい頃はフェラーリとは住む世界が違くて、フェラーリは頭がおかしい哀れな狂人だと思ってたけど、案外フェラーリ側には、ちょっとしたきっかけがあれば誰でも言ってしまうんだなと。

 

それに気づいてからお兄ちゃんが自殺するまでが短かったきがする。

当時自分がリーダーとして率いて、おもちゃとしていじっていたフェラーリに自分がなってしまったという絶望感かな。

 

さいころからみんなのあこがれでいい意味で注目の的になっていたから、悪い意味で注目される絶望に耐え切れなかったのかな。

まあ誰だって、普通の人だって急に下半身まひになったりしたら絶望するとは思うけど・・落差がひどかったのかね。

 

 

③泣いたところ

後半までは涙は一つも出なかった。

泣いたのは、お兄ちゃんのお葬式で、おかまのサキコさんがお辞儀したまま動かず、そのまま泣いていたところ。

なんだか、自分の好きな人の息子が自殺をした、しかもその息子は生前自分を慕っていて恋の相談なんかものっていたって考えたら、サキコさん側に感情移入してしまった。

もしかしたら、一番共感できたのがその時のサキコさんだったのかもしれない。

逆にほかの登場人物にはあまり感情移入できなかった。

いとおしくて好きなキャラクターばかりなんだけど、自分とかけ離れすぎて。

 

学校で人気者でモテる学生、昔美人でもてはやされた母親って共感できないな。

自分とかけ離れすぎて、かな。

自分以外の人の人生を追体験できるのが読書のだいご味だと思うけれど、共感できないキャラクターが多いと、主人公目線というか第三者目線で見てしまうな。

当たり前のことかもしれないけど、なんか冷めた目で呆然と立ち尽くしてその光景を見ているような、そんな感覚かな。

 

④さくら

さくらが時々しゃべるように「」がついているところ、きりこについての猫ちゃんの表現と似ていて面白かった。

昔飼っていた犬を思い出した。もっと散歩に連れて行ってやればよかった。

なんか、彼のことを思い出すと後悔とか涙が出てくる。

もっとかまって愛してやらなくてごめんと。

最後、さくらが死んじゃうパターンがよぎったけれど、ちょっと笑えるオチでよかった。

 

 

西加奈子さんの本、登場人物が狂ってるの多いな。海外にルーツがある人も。

だから主人公目線で共感!っていうよりは。俯瞰で物語を楽しむ感覚の方が多いかも?

 

きりこについて、猿に会うはわりかし登場人物に共感できたけど。

なんか登場人物のエネルギーがすごいんだよね!!わたしは少し冷めてしまっているというか、諦めてしまっている(何を)から、そのパワーに圧倒されちゃって、物語の途中から取り残されて、おうおうおうどうなるんだ、どうするんだ?って立ち止まってただ観戦するだけになる、という感じかな。

 

ふくわらいとか白いしるしもそうだったな。